羊肉特有の風味はニオイ?香り?
ジンギスカンは癖が強すぎて苦手。
くさいって聞くから食べる勇気が出ない。
そんなふうに思っていませんか?
確かに食べ慣れないものはどこか対抗がありますし、特有の風味があると聞くと敬遠しがちな気持ち、よく分かります。
筆者もパクチーが怖くて食べられませんでした。食わず嫌いです。
実際食べてみて苦手だった方も、食わず嫌いしている方も、
一度ジンギスカンの風味とはそもそもなんなのかを考えてみませんか?
特有の風味の正体は「フィトール」
牛肉を食べた時も、やや香りを強く感じることはありませんか?
もしかしたらその牛肉は牧草で育った牛のお肉なのかもしれません。
羊の香りも原因は同じ。
羊は草を食べて育ちますが、その草には当然葉緑素であるクロロフィルが含まれています。
それが食べられることでフィトールという化学物質に変化し、動物の肉や脂肪に蓄積していきます。
そのフィトールが特有の香りを生み出すと考えられているのです。
確かに穀物で育つ豚や鶏のニオイってそれほど気になりませんよね。
そして、ラムよりマトンの方が香りが強いとされる理由も同様で、
ラムは子羊なので草を食べている期間が短く、その分蓄積されたフィトールが少ないのです。
一方マトン、つまり成羊は長い間草を食べています。
その分多くフィトールが含まれているために香りが強いというのは納得ですよね。
世界の基準
余談ではありますが、
日本では生後12ヶ月未満の羊肉をラム、12ヶ月以上の羊肉をマトンとして分けている一方で、※1
海外では生後6〜8週間で乳だけで育てた羊をベイビーラム、
生後3〜5ヶ月で乳だけで育てた羊をスプリングラムとしたり、
永久歯が生えていても磨耗していなければラムとしたり、
乳離れしていない子羊をミルクフェッドラムとしたりと様々な基準があります。
歯の磨耗などを基準にするあたり、草をどれだけ食べているかにこだわっていることがわかりますね。
大きく風味が変わってくるからでしょう。
※1 ラム、マトンに加え肉質がラムに近い生後2年未満の羊をホゲットと呼ぶ場合もあります。
香りとニオイ
風味の正体が分かったところでニオイは消えませんね。
でも待ってください、イヤだと感じたそのニオイは本当に羊の風味だったのでしょうか。
フランスではフィトールの風味が強い、クセのある香りを「青草のいい香り」と表現するそうです。
もちろんそもそもこの風味がだめ!という方は仕方がないのですが、
もしかしたらこの風味とニオイを混同して苦手意識を持っているのかもしれません。
羊肉は特有の風味を楽しむことができるものですが、クサイ、ニオイがきついとされる理由がきちんとあります。
それは品質の良くない羊を食べてしまっていた場合です。
品質の悪いお肉って?
羊の脂は不飽和脂肪酸と呼ばれ大変上質なものなのですが、酸化しやすくその際にはイヤな酸化臭を発します。
また消費の多くを海外輸入に頼る羊肉は輸送しないといけないのですが、
その際の保存方法が不適切だと鮮度が落ち、先述の通り脂が酸化したり雑菌によりイヤなニオイを発したりするのです。
現代においてニオイのきついお肉が提供されるのははっきり言って店主の腕が悪い場合が多いでしょう。
イメージの先走り
またかつての日本では上質な羊肉を美味しくいただくというよりも、
羊毛の副産物である羊肉をうまいこと消費するためになんとか食べていたという側面が強く
決して上質とは言えない羊肉を食べた人々の
「羊の肉は臭くて食えたもんじゃない」
と言ったイメージが根強く残っているといった背景もあるようです。
他にも去勢に失敗した雄肉を使用してしまった場合も独特の獣くささを感じる場合があります。
羊肉にチャレンジしてみよう
良いお店で良い肉を食べてもやっぱりダメだった!という方は仕方がありません。苦手な食べ物は誰にでもあります。
しかし食わず嫌いやイメージだけで敬遠している人はぜひ一度チャレンジしてみてください。
「臭い」ではなく豊かな「香り」を感じることができるかもしれません。
ジンギスカンには「味付けジンギスカン」と「生ラムジンギスカン」の2種類が存在します。
味付けジンギスカンはかつて羊肉を消費しようと試行錯誤した結果生まれた、
柔らかく、臭みを抑えた漬け込み肉ですので食べやすいかもしれません。
味付けジンギスカンが美味しく食べられたら、肉そのものの味わいを感じることができる生ラムジンギスカンもきっと美味しくいただけるでしょう。
豊かな青草の香りとはどんなものなのかご自身の舌で確かめてみてください。